
2016年、しまなみ海道で感じたこと
最近は、国内のお客様はもちろん、海外からのお客様、ひとり旅、仲間同士、ファミリーなど、本当にさまざまな人たちがこの海沿いの道を走っています。

青い海を眺めながら走る人。港町で足を止める人。温泉街をゆっくり散策する人。ロードバイクだけでなく、E-bikeやミニベロなど、自転車の旅のスタイルもさまざまです。
大きな荷物を積んだ自転車。どこから来て、どこへ向かうのだろう。そんな想像も旅の楽しみです。

そんな風景を見るたびに思い出すのが、2016年に訪れたしまなみ海道での体験です。各地の観光地を訪れるなかでも、しまなみ海道で印象に残ったのは、絶景やサイクリングロードそのものではありません。

道沿いのカフェ。
自転車を歓迎する宿。
気軽に声をかけてくれる地域の人たち。
サイクリストを受け入れる空気が地域全体にありました。

旅の満足度を高めていたのは、景色だけではなく、その土地で暮らす人々との小さな接点だったのです。
天草西海岸にも、世界に誇れる風景があります。

世界文化遺産・﨑津集落。静かな港町に教会の尖塔がのぞく風景。祈りと暮らしが今も同じ場所に息づいています。

イルカが暮らす海。通詞島をぐるりと一周まわると、島の北と南で異なる風景に出会えます。島猫たちも気ままに歓迎してくれるはず。

鬼海ヶ浦展望所のすぐそばには、ぜひお試しいただきたい“絶景トイレ”も。

急ぐ理由が見当たらず、ただ海を眺めていた午後。そんな時間こそ旅の贅沢かもしれません。風来望は、そんな旅人にも優しいゲストハウス。

国民保養温泉地として知られる下田温泉。近年はサイクリストの立ち寄りも増えています。

サイクリストたちが自然と集まる足湯。走ったあとのひと休みが、旅の記憶を少し深くしてくれます。

下津深江川をぶらぶらと。川に差し込む夕陽に魅せられてペダルを止めました。予定になかった寄り道ほど、なぜか心に残るものです。

高台に広がる菜の花畑と、複雑な海岸線がつくる静かな入り江。ペダルを踏み続けた先に広がる青い海。坂道の先には、いつも少しだけ特別な景色があります。

集落の人々が大切に守り続ける、椿の森の営み。そして、森と海の循環。目の前に広がる東シナ海には、1億年の記録を物語る大ヶ瀬・小ヶ瀬の姿も。「西平椿公園」は訪れる人の視点によって多くのことを教えてくれます。

﨑津から大江の間の旧道から眺めた、東シナ海に沈む夕陽。旅の記憶は、名所の数ではなく、こうした何気ない風景や、人との出会いなど、心が動いた回数で決まるのかもしれません。
旅人の目線を通して地域を見てみると、普段は当たり前すぎて気づかなかった魅力が見えてくることがあります。海を眺めながら洗濯物が揺れる風景も、港に並ぶ漁船も、湯けむりの立つ温泉街も、その土地ならではの物語の一部です。
代々受け継がれてきた暮らしや文化、人々の営みが息づく、天草西海岸。この地におけるサイクリストウェルカムの取り組みは、単に自転車旅行者を増やすためのものではなく、地域の人たちが改めて自分たちの暮らしや地域の価値を見つめ直す機会にもなるのではないかとも、感じています。
ガイドブックには載っていない旅の記憶は、人との出会いや何気ない会話の中にあります。天草西海岸もまた、そんな旅の記憶が生まれる場所であってほしい。サイクリストの姿を見かけるたびに、あの日のしまなみ海道を思い出しながら、そんなことを考えています。


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